【インタビュー】DJ Fulltono & Keita Kawakami | ジューク/フットワーク・パーティー〈SOMETHINN〉について

日本のジュークDJの第一人者にして、新レーベル〈draping〉や、年明け1月にはUKの〈EXIT Records〉から新EPを発表予定など、精力的にリリースを続けるDJ Fulltono。
監修を務めたゲットーテック/エレクトロ・コンピ「delicious beats 4 sale! 」が好評を博しているKeita Kawakami。二人が2013年から続けてきたジューク/フットワークのパーティーが〈SOMETHINN〉だ。来年1月11日(金)にCIRCUS TOKYOで1年7ヶ月ぶりに開催することが決まったこのパーティーについて、フライヤーの作成などで関わりの深いTokunaga Kizamuがレジデントの二人に話を聞いた。

取材・構成/Tokunaga Kizamu(Twitter)
写真/Jun Yokoyama(Twitter / Instagram )

〈SOMETHINN〉というパーティーについて簡単に教えてください。

DJ Fulltono – ジュークを取り入れてるパーティーはあったけど、それをメインでやってるパーティーがないからそれを大阪でやろうと思ったのが始まりですね。〈SOMETHINN〉を始める前に〈JUKE SLIDE〉っていうジュークのパーティーをやってたんだけど、ジューク好きは集まるけどそれ以外の層に広がらないなーという感じだったんですよね。それでもう少し広がりのあるパーティーをやりたいと思って、ファラカミ(Keita Kawakami)くんを誘って始めたのが〈SOMETHINN〉です。

ファラカミくんを誘ったきっかけは?

DJ Fulltono – もちろんファラカミくんがいいDJっていうのはあるけど、ファラカミくんくらいしか頼める人がいなかったってのもあります。(笑)

Keita Kawakami – 2013年8月に第一回を開催して、途中からHoroki Yamamuraをレジデントに加えて、これまで24回開催してきました。
ちょうどジュークが世界的な広がりを見せはじめた時期と重なったこともあって、途中からは海外のジューク・アーティストをゲストに迎えることも増えましたね。TRAXMANRP BOOJLINDJ FUNKDJ PAYPALとか。

1年7ヶ月ぶりの開催になりますが、休止と復活の経緯について教えてください。

DJ Fulltono – 一旦やめようとか明確に決めた訳ではないです。タイミングがなかっただけというか…。さっき海外ゲストの受け皿として機能してたっていうファラカミくんの話があったけど、それが続いていくうちに、海外ゲストが来るからパーティーを開くってふうに段々なっていってしまったんですよね。後半は一回やっては止まってって感じになってしまって…。大阪にジュークを広めるという当初の目的はある程度は達成できたし、無理してやる必要はないかなって感じでしたね。最近になって二人で話すうちに、そろそろ〈SOMETHINN〉を復活させるタイミングかなと思うようになってきたんです。

Keita Kawakami – 僕が東京に移住した影響もちょっとあったのかもしれないけど。東京に来た当初は、〈SOMETHINN〉を東京と大阪で交互にやるという計画もあったんですけどね。
東京に来て最初に思ったのは本当に1からのスタートだなっと…。僕はもっとDJをして、東京のお客さんに自分のことを知ってもらう必要があった。まだまだなところはあるけれど、自分のスタイルをある程度は東京の人たちに認知してもらえてきたし、もう一度〈SOMETHINN〉をフルトノさんとやれる段階に来たかなと…。

鳥取・米子を中心に活動するDJのYUMYさんを〈SOMETHINN〉のレジデントに招き入れるそうですね。

Keita Kawakami – そうですね。2013年ぐらいに米子に呼んでもらったイベントでDJを初めて観ました。YUMYちゃんはオープンでジュークをプレイしてたんですけど、どういう感性でこんな感じになったんだろうって選曲をやってて、めちゃくちゃびっくりした。フルトノさんとかがやってるようなシカゴ直系のジューク/フットワークの感じは全然なくて、当時僕がやりたかったUKっぽい感じもやりつつ、僕らの周りでは聴いたことない音源を多くかけてて衝撃を受けたのを覚えています。そっからずっと気になってて、何か一緒にパーティーをやりたいなーって思いはずっとあったんですよ。今回フルトノさんともう一回〈SOMETHINN〉を始めようというタイミングで誰とやったら面白いかなーって考えた時に、一緒にやりたいなと僕は思いました。
YUMYちゃんがジュークを好きやねんなというのは節々にいろいろ感じることがありました。Seihookadadaさんが主催した〈AT THE CORNER〉っていう全国の才能ある若いアーティストを集めたイベントでは、完全にジュークのセットでDJやってたんですよね。その日は自分の一番攻めてて気に入ってるセットを披露する場かなって思って、やっぱりジュークは好きなんやなと思ったんです。その時のプレイもかっこよかったし、僕がフルトノさんとやってきたことと近い感覚を感じたし、一緒にパーティーやりたいなーって思いました。鳥取に住んでるので毎回出演するのは難しいのですが、出演出来るタイミングだけでも一緒にやっていきたいなと。

YUMYさんのDJはジューク・セットとハウス寄りのセットを一度ずつ聴いたことがあるけど、よくこんなミックス思いついたなっていう面白いプレイをしますよね。

Keita Kawakami – そうですね。あっと驚くミックスするんだけど、スムーズでいやらしくないというか。グルーヴはずっとキープされてるし。僕の中ではフルトノさんと僕が持っていないラインを持っているから、この3人ならオープンからラストまで流れを作っていけるだろうなーって。

今後の〈SOMETHINN〉をどんなパーティーにしていきたいですか?

DJ Fulltono – ずっと前から言っているけど、ジュークのいろいろな可能性を探っていきたいですね。ジューク=ダンサーが踊ってというシカゴのスタイルを表現するっていうのも目標の1つだけど、SOMETHINNではダンサー以外に向けたスタイルというものをもっと探っていきたいというか。
普段DJしている現場のほとんどはダンサーのいないパーティなので、普段からシカゴで生まれたフットワークダンサーに向けた音楽をどう改良して日本で日本のお客さんの前でやるかっていうのを常に考えているんやけど、そういうのをもっと自由に自分のペースで表現できるパーティーと言うのをやりたいなと。
それで同じような境遇でやっているファラカミくんと一緒にそういうパーティーを一晩やるという、そういうところから〈SOMETHINN〉は始まっているから。そんなにジュークを流行らせたいとか言うのは大げさかなと思っている。もうちょっと普通にジュークを聴いてもらえるそういう場を作りたいという気持ちですね。

パーティーを続けていくうちにアンセムができたりとか、継続していくからこそ生まれる面白さってありますよね。

Keita Kawakami – 〈SOMETHINN〉を定期的にやってた頃の自分のDJが個人的にすごい良かったよなぁと感じてて。ジュークという一つのジャンルの中でお互いに今はどういうモードかなって分かり合いながらやってました。この曲はフルトノさんが掛けそうだからやめとこうとか、そういうことを考えて自分のスタイルを模索していってて、最後の方は結構見えてきた感じがあって。
ソウル・ネタのジュークをやり始めて、フロアにハマりだした時とか面白かったですね。あのプレイもいろいろ考えて試す中で生まれました。
そっからは結構クローズを任される事が多くなって。フルトノさんが3時ぐらいに超ミニマルなフットワークでフロアを盛り上げて、皆が踊り疲れてるタイミングでパスされるので、その後座ってる人らをどうやってもう1度フロアに戻すかが勝負みたいなセットでした。(笑)DJ SPINNの「DEEP」という曲が当時の〈SOMETHINN〉アンセムになってて、皆で大合唱するみたいなのが起き始めたり、ジュークのイベントでああいうクローズの雰囲気を作れたのは良かった。

あとフルトノさんが2015年ぐらい?に突然BPM120と160を混ぜるセットをやりだして、それには本当に影響を受けた。僕もすぐ真似して他のイベントでもやってたし、〈SOMETHINN〉内でも皆自分のセットでやったりめっちゃ流行ってた。(笑)

回を重ねるごとにだんだんとフルトノさんとファラカミくんのスタイルの違い明確になっていくのが印象に残ってます。フルトノさんは徐々にディープでミニマルな方に向かっていって、ファラカミくんはジュークのキャッチーな良さを伝えるようなプレイになっていきましたね。同じジュークでもここまで違う音楽性を表現できるんだなと。

Keita Kawakami – 同じジャンルだからこそ余計に面白かったですよね。あの時はいろいろ考えつつ、毎回共演者にもかましたろ!って気持ちでやってました。東京に出てきて色んなイベントに出る機会が増えるなかで、〈SOMETHINN〉ってパーティーの大切さを再認識したんですよね。正直、単体のイベントにでるだけではそこまで自分のスタイルを掘り下げられないというか。
そんな今だからこそ、もう一回フルトノさんと一緒にDJをやっていきたいなと。

DJ Fulltono – DJだけやるということだったら二人とも別に呼んでくれるパーティーとかあるやんか。月に2、3回はやっているみたいな。別に無理してパーティーを自分たちでやらなくても、DJやるだけだったらやらせてもらえるところはある。ただ、〈SOMETHINN〉をやってないと自分の中の音楽性に発展がないというのを感じるんですよね。ファラカミくんが言うのとちょっと近いかもしれないけど。
オープンからスネアばしばしいってる曲は違うよなとか、そういうことを色々考えたりするやんか。じゃあオープンにかけたいようなジュークをもっと集めないといけないなってなってきたり。テクノとかは完全にそうだけど、ドラムンベースとかもドラムンベースだけのパーティーがあるやんか。DJの人たちと直接話したわけじゃないけれど、たぶんオープンに合うドラムンベースとかそういうの絶対あるはずやねん。ジュークでもそういう感じにしていきたいなと。他のジャンルを間に挟むのはもちろんいいんやけど、ジュークだけでどう工夫してやるかみたいな。それはすることによって音楽性もジャンルの幅も広がるんじゃないかと。

フルトノさんが「こういうタイミングでこういう曲をプレイしたい。でも無いから自分で作る」みたいなことをよく言ってるじゃないですか。〈SOMETHINN〉はそういうことに気づく場所だったのかもしれないですね。

DJ Fulltono – 確かに。僕が最近作ってる曲はまさにそういうことだけ考えて作っていて、ミニマルな展開や、音数が少なくてディープなものばかりここ数年作ってる。でも決して自分がディープ趣向になってるわけじゃなく、DJの表現の幅を広げるために世に出てないタイプのものを作ってるんですよ。もっとシカゴに近い感じのダンスバトルなジュークとか作りたい気持ちもあるけど、そういうのはDJする上で、十分足りてるし、わざわざ時間をかけて自分で作らなくてもなんぼでもリリースされてる。
パーティーのこの時間にこういうのを掛けたいたいから自分で作るなり、そういうのを作っている人を探したりとか。自分がDJで使いたい曲を集めてきてパーティーでプレイするっていう事をレギュラーのDJみんなが繰り返していくうちに、ジャンルが発展していくじゃないかと。
やっぱりそういうのは自分のレギュラーパーティーがあってできることなのかなあという感じがするし、自分達でパーティーをやる意味はあるのかなって思う。

https://draping.bandcamp.com/track/draping-5-3

1月11日(金)に東京で開催される〈SOMETHINN Vol.25〉について分かる範囲で教えて下さい。

Keita Kawakami – 1月は僕とフルトノさんに加えて、ゲストでCHANGSIEさん、フルーティくん(Ace-up)、AE35さんが出演します。YUMYちゃんは残念ながら予定が合わず出演出来ません。CHANGSIEさんのDJを最近聴いたんですけど、色々かけてたけど明け方にジャングルとかジュークとかをめちゃくちゃカッコよくプレイしていて、衝撃をうけたんですよね。絶対〈SOMETHINN〉にもハマると思ってオファーさせてもらいました。

https://soundcloud.com/changsie

DJ Fulltono – Ace-upは先月にリリースしたアルバムが良かったんで、ぜひ〈SOMETHINN〉でみんなに聴いてほしいなと。DJも間違いないアーティストだし。
AE35さんはずっとこのパーティーに呼びたいと思っていたエレクトロのアーティストです。

https://shinkaron.bandcamp.com/album/footworkers-delight
https://koolswitchworks.bandcamp.com/track/ae35-no-room-left

Keita Kawakami – あと2月10日(日)には大阪でも〈SOMETHINN〉をやります。そちらにはYUMYちゃんも出演します。1、2組ぐらいゲストを入れて開催するつもりです。
朝までどんな雰囲気を作れるのかめっちゃ楽しみにしてます。是非遊びに来て頂けると嬉しいです。

DJ Fulltono – そして、パーティー当日は偶然にも、僕の新EPリリース予定日と重なりました。リリパも兼ねて気合い入れた内容にしますので期待してください!

〈SOMETHINN Vol.25〉
2019.1.11(FRI)
at CIRCUS TOKYO

■GUEST
CHANGSIE
Ace-up
AE35

■RESIDENT
DJ Fulltono
Keita Kawakami

〈SOMETHINN Vol.26〉
2019.2.10(SUN)
at CIRCUS OSAKA

■RESIDENT
DJ Fulltono
Keita Kawakami
YUMY